スイス・ブルー

投稿者: | 2017-08-24

スイス・ブルーは、こんなイメージ。

 

早朝のLINEは、スイスに住む友人からだった。

 

「ひさしぶりだね。今年の夏は、休みがとれそうかい?」

 

朝食がわりの人参ジュースを飲みながら、

彼の言葉の意味を考える。

 

去年は、お互いに忙しくて、会えずじまいだったんだわ・・・

 

毎年、彼は長期の休みを取って日本にやって来る。

 

去年は、桜の季節にやってきた。

「ひと月いるよ。会いたいなぁ」

 

しかし。

私は、ちょうど仕事に没頭していた時期で、

気が付いた時には、彼は帰国してしまっていた。

 

連絡無精な私なのだが、

こうしてまたメッセージをくれるとは。

 

私は、彼の顔を思い出そうとした。

 

最後に会ったのは、2年前。

彼の友人の家に招かれた。

 

彼は、好きな本の話をしてくれた。

 

ジブランの『預言者』。

 

彼は、流暢な英語で、好きな章について熱く語った。

 

ときどき、私の知らない単語が出てきた。

哲学的、あるいは宗教的な言葉なのか・・・

彼の話を中断するのは気が引けて

黙って聞いていると

彼は、私の表情に気付いて、話を止めた。

 

まっすぐに私を見た、彼の目を思い出す。

 

金色の睫毛にふちどられた、水色の瞳。

 

「今の、意味わからなかった?

わからなかったら、ちゃんと言って?

一方的に話したいわけじゃないんだ。

僕のことを理解してほしいし、

君のことも理解したいんだよ」

そして、やさしい言葉で説明してくれたのだった。

彼は、いつも相手を尊重し、紳士的にふるまう人だった。

 

爽やかな、アクアブルーの風。

 

ああ、去年の夏、私は何をそんなに忙しくしていたのだろう。

 

自分のことしか、見えていなかった。

彼は、いつも、私に理解を示してくれていたのに。

 

空になったグラスを置いて、メッセージを打つ。

「今年は、休みをとるよ」

スイス・ブルーの瞳が恋しくなったから。